ロアの塔
高い高い塔の下から上を見上げてたんだ
荒びれた大地に聳え立つ一本のあの塔を
誰一人登りきったという話は聞かなかったが
其処には何かがあると皆信じてやまなかった
いつしか皆その塔を登り始めたんだ
入口も階段も無い 文字どおりの道無き道を
なんども両手両足を滑らせ必死にしがみついて
一歩また一歩登っていく
いつだってそうだろう
僕たちは変わっていく
いつだってそうだろう
上を向いて
ただ登ってく
高い高い塔の上から下を見下ろしてたんだ
なんだか世界の全てを知ったかのような気になってさ
麓で醜い声を荒げて争う獣たちや
抗うことなく潰される草木を見て嘲笑った
そうまるで僕らは井の中の蛙そのものだった
濁りきったその目じゃ
どうやら未来は見えなかったようで
何処からともなく吹いた風が嵐を呼び起こして
重く軽い塔はたちまち崩れて行った
いつだってそうだろう
世界は変わっていく
いつだってそうだろう
僕らは置いてけぼりの一人ぼっちだ
崩れた塔の残骸で
人々は家を建て始めた
目紛しい早さで
街が出来上がってく
マッチを売る少女
馬車を引く商人
賑わう街の隅で
歌うたいが歌う
「むかしむかし あるところに 高い塔がありました」
いつだってそうだろう
世界は変わっていく
其の背中を
追い越していくんだ
いつだってそうだろう
僕たちは変わっていく
いつだってそうだろう
変えられない昨日を悔やんで
変わる明日を夢見て
目の前の今日を
歩いてく