灰色、その声は遠のく。
潮で錆び付いた街灯
中途半端に栄えたあとのみられるシャッター街
揺れる水面はかつての輝きを
忘れるには充分過ぎるほどに
濁りきっていた
長い廊下の隅っこ
物置みたいな一畳そこが僕の居場所だった
等速でいつも近付いてくる
つがいのその音が聞きたくなくて
あなたと浜辺をぶらついていた
拾った瓶の中の手紙に記されていた
街の景色はあまりにも眩しすぎて
高い声で鳴いた海鳥を睨みつけても
何処にも飛べない僕だった
指で描いた架空の世界地図も
作った砂の城も
波が揺れて搔き消してく
寂しげに
少しだけ笑ったあなたの名前も
どこかに置いてきてしまった
浜に流れ着いたガラクタを
あなたと集めて海に浮かべていた
この街で一生飼いならされて
錆びていくだけの日々は死そのものだった
やっと形になったガラクタに
僕らの夢を乗せるはず日の前夜
約束の場所に不穏な明かりと煙と人影があった
廃れきったここを離れ
遠い遠い街で暮らす
大切な約束の行方は海の向こうに
二つの希望を編んだ
船は燃えていた
「もう何処にも行けないのね」
儚げに
少しだけ泣いたあなたの涙も
この煙とともに灰になって飛んだ
あの海の向こうへ